【たびワイン】ワインの香り:樽香

ワインは香りを楽しむ飲み物でもあります。その香りは大きく分けて3つ。
ブドウそのものが持っている香り、発酵の過程で生まれる香り、育成の過程で生まれる香りです。
この 3 つの香りがわかるとそのワインの正体が見えてきます!
一杯のグラスの中にある香りの種類は約 300 種類以上と言われます。その香りの源は大きく分けて3つ。
ワインは原料となるブドウを発酵させて造るお酒のため、必ずブドウから生まれる香りと発酵から生まれる香りがあります。
そして出来上がったワインを育成させるときに生まれる香りです。出来上がったワインをすぐ飲んでしまう場合、育成の香り(ニュアンス)は感じられません。育成の香りはそのワインによって有無が分かれますが、実はこの育成由来の香りがあるのかないのかは、ワインビギナーにとってとてもわかりやすい香りです。
特にワインを熟成させる際に使う木樽、この木樽から生まれる香りをぜひ感じでみましょう!!


ワインを熟成させる木樽の製造ですが、製材したばかりの木材は水分が多く含まれているので 3 年ほど自然乾燥させます。
近年の研究で、自然乾燥させた木材には、もともとそこを住みかとしている微生物がいて、これにワインが接触するとポリフェノール類が様々な化学変化を起こし、ワインに複雑な風味や深みなどを与えプラスになることが明らかになりました。家具などに使う木材を乾かす乾燥機を使用すると、この微生物たちが死滅するのでワインに複雑さを与えることができません。自然乾燥を終えた樽板は樽の形に組み上げられたのち、内側を焼き入れ(トースティング)します。この焼き入れの工程を経ることで完成した樽には豊富かつ複雑な風味成分が加わります。


例えばワインにとってとても好ましい香りのひとつ「バニラ香」。樽材に含まれる「リグニン」が加熱分解されて生成する「バニリン」由来の香りです。それから「ヘミセルロース」が加熱分解されると「トーストしたパン、キャラメル、ココア、コーヒー」などの香りがワインに加えられます。その他、「スパイス、カーネーション」と言った香りも焼き入れ具合により生成された化合物からもたらされます。焼き入れが強くなればなるほどワインに色濃く反映されますが、その科学的なメカニズムはまだ解明されてない点が多いです。

木樽はワインにとても効果的に働きますが、実際製造にはコストがかかります。最上級のランクの木樽は 1 樽700€から1000€!!そしてこの樽、ワインにとって効果的に使えるのは長くて 4 年、その後は木樽からの香りは無くなり、ただの入れ物にしかなりません。資金力のあるワイナリーでないと毎年新しい木樽を購入することは不可能です。
ワイナリー訪問で「今年度は新しい樽をいくつ購入しました?」なんて聞いたりして(笑)!!

ここまでのお話しだと、木樽を使い熟成由来の香り「バニラやキャラメル香」があるワインの方が品質の高いワインと思われてしまいそうですが、そうではありません。品種や地域また価格、生産者の考え方によってはあえて木樽で熟成させないワインもあります。
フランスアルザス地方で有名なリースリング種のワインはブドウ由来の華やかな香りを楽しみながらいただくワインなので、木樽の香りはかえって邪魔になります。ブルゴーニュでも北の地域は樽熟成しないドライなシャルドネを造り、南の地域では樽香の楽しめるコクのあるシャルドネを造っています。また早飲み(コスパの良いワイン)もフレッシュさを重視するので、木樽の香りはありません。樽香を付けるのが必ずしも品質の高いワインと言う事ではないです。

簡単なワインの香りチャートです。今晩ワインを飲む際ぜひグラスの中でこれらの香りを探してみてください。
まずは、ワインの香りに慣れることが必要です。最初の一杯はぜひ以下の事を考えながら飲んでください!!

白ワイン:ブドウ由来の香り→レモン・グレープフルーツ・リンゴ・洋ナシ・パイン
白ワイン:熟成由来の香り →バニラ・アーモンド
赤ワイン:ブドウ由来の香り→イチゴ・ラズベリー・ブラックチェリー・プルーン
赤ワイン:熟成由来の香り →バニラ・スパイ

木樽の香りを知りたい方は、カリフォルニア産のシャルドネをお勧めします。ヨーロッパ産のワインよりアメリカ産のワインの方が木樽の香りが強い傾向にあります。樽香が見つかったら、「木樽からのニュアンスが感じられる」と言う言葉をぜひ使ってみてください。ちょっとツウっぽいですね!!
ワインの香りは一日で習得できるものではありません。
毎日の飲み重ねが大切です。一緒に楽しく頑張りましょう。!!