【たびワイン】ドイツ二大銘醸地のひとつ「モーゼル川」<前編>
ヨーロッパで人気のワイン生産国のひとつ、ドイツ。
日本の面積よりやや小さく、ワイン用ブドウを生産している地域は北緯 47 度から52 度。
これはおおむね樺太(サハリン)の北緯に相当します。この様な環境から、ドイツでは気候が冷涼なためブドウがよく熟さなかったので、白ワイン用の白ブドウ栽培が主流でした。
赤ワイン用の黒ブドウは太陽が燦々と降り注がないとうまく栽培できないことが多いからです。
しかし、昨今の赤ワインブーム、そして地球温暖化の影響で夏は 30 度を超す産地が増え、現在ドイツでは赤ワイン用の黒ブドウ栽培も多くなり、生産されるワインの約30%が赤ワイン。とはいえ、やはりドイツは白ワインの国と言っていいでしょう。
ドイツワインの歴史は、紀元前 5-4 世紀に遡ると言われています。当時ライン川や、モーゼル川周辺のケルト族は地中海産のワインを輸入していたことが、地中海地方でワインの運搬に使用されていた素焼きの容器「アンフォラ」が出土されていることからわかっています。
紀元前 16 年頃にモーゼル川沿いにローマ軍がやってきて、西ローマ帝国皇帝の移住地としました。その際、様々な文化が華開き、ワイン用ブドウ栽培、ワイン醸造も盛んに行われました。3-5 世紀のブドウ圧搾機の遺跡も見つかっています。
その後、ゲルマン民族の大移動をきっかけに西ローマ帝国が滅亡し、キリスト教の世界が始まります。
キリスト教ではワインはイエスキリストの血であり、なくてはならない飲み物でした。6 世紀の記録には、モーゼル川を航行した詩人により、「モーゼル川の急斜面の岩肌で赤ワイン用のブドウが栽培されている」と記されています。
現在ドイツには全部で 13 のワイン生産地域があります。
その中でも銘醸地、例えばフランスのブルゴーニュやボルドー、イタリアのトスカーナやピエモンテのような、
国を代表する産地は、「ラインガウ地方」と「モーゼル地方」です。
ワイン産地の「モーゼル」とはワイン産地の名前であり、川の名前でもあります。モーゼル川はフランスのアルザス地方にあるヴォージュ山脈が水源で、ロレーヌ地方を流れた後、ルクセンブルクとドイツの国境となり、蛇行しながら流れ、コブレンツでライン川に合流します。
ドイツ領内のモーゼル川は全長231km。蛇のようにくねくね蛇行しながら流れるため、川の流れにそって様々に向きを変える渓谷の斜面の約 4 割が、なんと斜度30%を超える急斜面。畑に立つと断崖絶壁の上に建っているようで、足がすくみます。
なぜこのようなところに畑をつくったのか、、、、
畑で働く人々の事を考えても、もっと平らなところで栽培する方が楽なのに・・・
次回はモーゼルのブドウ産地がなぜ銘醸地とよばれるのか、急斜面でブドウを栽培する際の先人たちの知恵を考えてみましょう。